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2024.02.15
『news every.』コーナー「#みんなのギモン」
女性を悩ませる、トイレの行列問題。街でもSNSでも悲痛な声が聞かれます。トイレは快適な空間となり、オフィスにある個室トイレの利用時間は時代とともに延びています。一方で、トイレの数に関する国の基準は古いまま。改善するためのポイントを考えます。
トイレに列…昔からある悲痛な声
加納美也子・日本テレビ解説委員
「お店や駅や職場で『またトイレに行列ができている…』ということ、ありますよね」
徳島えりかアナウンサー
「まさに日本テレビ報道局のお手洗いでも、本番前に行列ができていて、もっと早く行けばいいんですけども、『ああどうしよう、本番始まっちゃう』と焦ることがあります」
加納解説委員
「(私が行った時)今日も満室でした」
「街で聞いても、『デパートとかショッピングモールとか、並んでるとあきらめちゃう。他の階を探したりします』『ライブとかでトイレに並んでいて、(開演)ギリギリになって焦った記憶とかはあります』など、いろんな声がありました」
「また、『子ども連れて待ち時間長いと大変。男性より時間がかかると思うので、(トイレが)増えたらうれしいなと思います』という意見もありました」
「皆さんいろいろ、悩みとか不満はありますよね。SNS でも『(行列ができていて)男子トイレに入ってしまいたい』『アトラクション待ちのように長い』といった悲痛な声が聞こえてきます。こういう声は、昔からずっとありますよね」
昔と比べた個室トイレの利用時間は?
加納解説委員
「1人1回でどれくらいの時間、トイレを利用しているのか。トイレの内装などを手がけるパーティションメーカーのコマニーが、オフィスでの個室トイレの利用時間を調べたデータがあります。2021年で男性は6分52秒、女性は2分32秒でした」
「どういう時に個室を利用するか考えると、男性の方が長いというのも分かります。この時間を1965(昭和40)年と比較します。当時は男性が5分、女性は1分30秒で、それぞれ約2分、約1分長くなっています」
藤井貴彦アナウンサー
「なんでしょうね、自分に納得がいかないんですかね…? または、スマホを利用している時間が長いとか?」
加納解説委員
「素晴らしい指摘だと思います。どうして長くなるのかを見ていきます」
研究家に聞く…利用時間増の背景は?
加納解説委員
「トイレ研究家の白倉正子さんによると、和式の時代は体勢がつらいので、自ずと利用時間は短かったのですが、今は洋式で温水洗浄便座もあり、自然と利用時間が延びています。さらに、スマホが普及してトイレで使っている人もいるということです」
「昔よりもトイレがきれいで、快適な空間になっていることが背景にあるのではないかと、白倉さんは指摘しています」
新たな問題も…問われるモラル
加納解説委員
「それに伴って、こんな問題も起きています。トイレに籠城する人がいることです。個室内のコンセントを使ってスマホを充電してゲームをしたり、ヘアアイロンを使っていたり」
「いびきが聞こえた、コンビニのおにぎりを食べたと思しきのりの破片やゴミが落ちていた、という声もあります」
河出奈都美アナウンサー
「用を足す以外の目的で使うのは良くないなと思いますが、籠城とまでは言わないまでも、トイレの行列に並んでいると、トイレ待ち疲れをしてしまって、いざ自分が個室に入れた時に『ちょっと疲れた』と、若干利用時間が長くなってしまうところは反省しています」
加納解説委員
「ちょっとホッとしちゃうんですよね。こうした籠城はモラルの問題ですから、一人ひとりが意識を変える必要があります」
混雑解消には男性用の 1.5倍は必要
加納解説委員
「次に、トイレの数が足りていないのか、という点について見ていきます。NEXCO中日本がサービスエリアで行った調査では、平均的なトイレの利用時間は 1回につき男性は 37.7秒、女性は93.1秒でした」
「これは本来の目的で使った場合の時間で、だいたいこれくらいの時間がトイレ業界の基準とされています。単純にトイレの面積や便器の数が同じなら、女性用が混むのは明白。女性用を男性用の少なくとも 1.5倍は設置しないと混雑は解消されない、というわけです」
国が定めた職場トイレの基準は?
「これを踏まえて、職場のトイレをどのくらい設置すべきかという国の基準を見てみます。厚生労働省によると、男女それぞれ 65人が働いている職場の場合、男性の大は2つ、小は3つ。女性用は4つです。これ、どうですか?」
刈川くるみキャスター
「実際の現場のデータでも、女性は男性の倍近くの時間がかかると出ているので、この国の基準のままだと不便だな、納得できないなと思います」
職場のトイレ、21.6%は「男女共用」
加納解説委員
「ニーズに合っているとは言えないですよね。2020年に労働政策研究・研修機構が発表した、職場のトイレの整備状況に関する調査もあります。それによると『男女別』は78.4%で、その他の21.6%は『男女共用』でした。特に小規模の事業所に多いということです」
徳島アナウンサー
「どうしてもスペースの問題はあるんでしょうけども、こぢんまりとした飲食店なんかでもありますよね」
加納解説委員
「職場のトイレについては 1972(昭和 47)年に労働安全衛生法で『男性用と女性用に区別すること』と定められました」
「労働者が10人以内と少ない職場は、例外として共用が認められますが、可能な限り区別することが望ましく、10人以内だからといってトイレが設置できるスペースを倉庫にすることは不適切とされています」
河出アナウンサー
「働く人数が少ない職場だからこそ、ちょっと気まずいので分けてほしいなという気持ちもありますし、なんとか女性のトイレの多さ、比率を上げてほしいところですよね」
日本トイレ協会理事「数の見直しを」
加納解説委員
「時代の流れに追いついていないのかなと思いますよね。日本トイレ協会理事の高橋未樹子さんによると、トイレの数の問題については、基準自体が昭和 40年頃の調査をもとに作られていて、古いままです」
「『時代とともに女性の社会進出が広がり、見直すタイミングに来ている』と高橋さんは話します。ただ『すぐに数を増やすのは難しいため、まずは籠城の問題を解決すべきだ』『トイレは自分だけのものではないと考えてもらいたい』と指摘しています」
「高橋さんは、『例えば職場では 1人になりたい人のために個室の休憩スペースを設ける、商業施設では充電できるカフェを作るなど、本来の目的以外でトイレにいる時間を減らす対策をしてみるのもいいかもしれない』と言います」
「これまでトイレはお金を生み出さない場所と思われがちでしたが、最近では商業施設などでトイレを充実させて、それをウリにお客さんを呼ぶという取り組みも行われています。それぐらい、トイレは生活の中で重要ポイントなんですよね」
当事者意識を持ってマナー順守を
藤井アナウンサー
「今回はスタジオに男性は私しかいませんが、男性トイレでそんなに行列で困ったことはないんですよね。男性の規模と、トイレの数が基準になっていけば、女性にも行列ができないんじゃないかと思います」
「もしかしてその判断をするのが男性だったら、女性の気持ちが分からないで女性のトイレを設置してしまっている可能性があります。生理現象ですから男女の差は必ずあると思います。トイレのように水に流さず、しっかりと考えていきたいなと思います」
加納解説委員
「トイレは誰もが利用する場所です。トイレの行列問題についても、私たち一人ひとりが当事者意識を持って、改めてトイレのマナーを守っていきたいと思います」
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